ごらん パレードが ゆくよ

 パレード・ソング、という音楽ジャンルがあります。
 いや、たぶんあるんでしょう。あるような気がします。
 カーニバルのパレードは、いつもの街をあっというまに非日常の空間に変え、そして去っていきます。行ってしまった後には、少し高揚した気分と、いつもと変わらない街と、ほんの少しだけどとても深い寂しさが残ります。そんなパレードの気分が伝わってくるような曲を、パレード・ソングとぼくは言っているのです。
 パレード・ソングの条件として、高揚と切なさ、明るさと物悲しさが共存する曲調であることと、タイトルか歌詞に「パレード」という単語が入っていることをあげておきましょう。不思議と、「パレード」っていうタイトルの曲が多いんだ。
 なんといっても代表的な曲はあの、

TREASURES

TREASURES

パレード
 でしょうね。「明日は明日さ祭りはこれから/二人で一緒に口笛鳴らそう/ごらん、パレードがゆくよ。ごらん、パレードがゆくよ」というサビの広がりと盛り上がりと切なさはパレード・ソングの真骨頂です。つじあやのもカバーしてましたよね。

 これなんか、タイトルにパレードが二つも入ってます。陽気なパレードをひとりで見ているときの人恋しさ。これもパレード・ソングの特徴ですね。「陽気なJAZZあふれてるニューオリンズ/毎日がお祭りの街/知らない自分に会いたくて/一人きり旅に出たのよ」。ニューオーリンズですか。今は行かないほうがいいと思います。

パレード・パレード

パレード・パレード

 ロンサムですよ。パレードなのに、ロンサム。孤独なんだ。タイトルからしてぼくのパレード・ソングのイメージにぴったりです。歌詞も孤独です。「僕らいつも すれ違っていくことばかり/なぜなんだなんて思って/全てに答えきれないまま」。パレードに孤独感はつきものなんです。

トゥインクル

トゥインクル

 もともと、キリンジheacoのために書いた曲(Winter lovely Dayというタイトルで、歌詞もぜんぜん違います)だったのですが、アルバム「オムニバス」でセルフカバーしています。マーチ風のドラムがずっとダンダカダンダカと鳴っていて、元気なパレードみたいなんですが、メロディーにはどこか物悲しい感じもあって、歌詞もやっぱりただ明るいわけじゃない。「見ろよ ほらシャボン玉が屋根を越えた/悲しい出来事なんて/起こらないように/パレードがやって来た」。パレードはただ楽しいというより、日々の悲しみや痛みをひととき忘れるためのものなのでしょう。
One Fine Day

Omnibus

Omnibus

 なんだか、ロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オブ・フレンズに入ってる"Don't take your time"という曲(および、ピチカート・ファイヴの「大都会交響楽」という曲)にそっくりなんですが、名曲です。「パレードは終わるいつの日か/すれ違ってくだけの人々をつないでいた/僕達はここで ありふれた夢だけ見てた」。ほらね、やっぱり終わるんです。

Small Circle of Friends
大都会交響楽

THE FIRST QUESTION AWARD

THE FIRST QUESTION AWARD

 トーレ・ヨハンソンプロデュース、ウルフ・トゥレソン作曲の、いわばスウェーデン産パレード・ソング。歌詞は原田知世さんが自ら書いていらっしゃいます(と、敬語になってしまう)。「遠く ああ遠く あの星あたり/声を投げてみよう」。そうです。パレード・ソングは、遠い非日常の存在への憧れなのです。

Flowers

Flowers

  • ラウンド・テーブル「Brownie」

 実にパレード的なメロディー。タイトルに「パレード」は出てきませんが、歌詞に出てきます。
 「君のとこまで大きく響けシンバル 続いてゆくパレード どこまでゆくの」

domino

domino

 これも歌詞に出てきます。それも冒頭にいきなり、「パレードのトロンボーンと 撃つためのドライフルーツ」というフレーズです。
 この曲は歌詞全体にパレード感(?)があふれていて、「髪を長く伸ばしてみて/もとには何も戻らないと知るはず」とか、「気づくのはいつでも過ぎた後だろう」なんて、なんだか青少年期に特有の、取り返しのつかなさ、みたいなものがあふれています。素敵だ。

シングルズ

シングルズ