赤い絵
土曜日、奈良市内にあるアートギャラリー、out of placeに行って来ました。名古屋在住の画家、関智生さんの個展を見るためです。
いや、面白かったです。絵画を文章で表現しようというのはどだい無理な話ですから、現物を見ていただくしかないのですが。
今回出展されていた絵画は全て、鮮やかな赤一色で描かれたものです。白いタブローの上で赤い点や線が入り乱れ、炎のように渦巻き揺らめいているようにも見えます。しかしそれらはいずれも、濃密に繁茂した森や藪や田園などの植物相を、独特の様式化された筆致で緻密に描写した風景画なのです。
森や緑というのは美しいものです。しかし、植物の生い茂った山や森の風景を見るとき、私たちは、それを美しいと感じる一方で、葉の一枚一枚や草の一本一本に無数の生命のうごめきを感じて、その気味悪さにぞっとするということがないでしょうか?
関さんの絵に、僕はそれに似たものを感じました。葉緑素の緑でなく、ヘモグロビンを思わせる赤で描かれていることで、植物の生命感が目に痛いほど強調され、ずっと見てると自律神経が変になりそうでした。
この日は関さんご自身によるトークイベントもあり、これがすごく面白かった。絵画というジャンルへの突っ込んだ考察や、近世の日本画の手法や構造を解釈し直して描いていらっしゃることなど、画家の手の内の秘密をいろいろ明かしてくださいました。語り口もすごく面白くて、お茶目なお人柄でイベントを盛り上げていらっしゃいました。極めて理知的な方法論をお持ちであるのと同時に、ご自身でも把握しきれないような力強い何かを作品に込めていらっしゃる方なんだなと感じました。
絵画の他にスナップ写真の作品群も展示されていて、これも面白かったんだけど、文章で説明しても全然つまらなくなるのでやめときます。
実は東京での展覧会はもう終わっちゃってるんですが、奈良では6月14日までですので、興味がおありの方は、ぜひ。
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