いい日旅立ち

キップをなくして

キップをなくして

キップを失くした子は「駅の子」になって、改札の内側で生活することになる……という設定が実に魅力的なファンタジー。たしかに、鉄道というのはとても巨大なシステムで、その中には何もかもがそろっています。国鉄の構内には食堂も理髪店も売店も、全てがあるんですね。
 国鉄。そう、舞台は国鉄の時代なんです。完結した一つの世界のような、この一種独特な感じは、やっぱり民間企業のJRでは出てこないような気がします。思い出してみると、国鉄時代の駅や車両には、人を旅に誘うようななんとも言えない雰囲気があったんだよなあ。
 ただ、この作家には少し倫理的(かつ知的)すぎるところがあって、それがこの人の魅力でもあるのだけど、僕のようなへそ曲がりはちょっと白けてしまう時もあったりするのです。