善惡の彼岸過ぎ迄

  • 夏を遠く離れ、海水浴を、ビーチボーイズを遠く離れて、中秋も過ぎて間もなくお彼岸だと云ふのに、此の暑さはどうであらうか。暑さ寒さも彼岸迄、とは古來人口に膾炙されてゐる經驗則であるが、今年の暑さは此のままでは彼岸を越えるにちがひあるまい。

彼岸過迄 (新潮文庫)

彼岸過迄 (新潮文庫)

  • 善惡の彼岸、と云ふ言葉がある。ニーチェの言葉であるが、其の意味するところは、私にはさつぱり分からないのである。然し格好いい言葉である事に間違ひはあるまい。だが此れを、叮嚀に、「善惡のお彼岸」と言つてしまへばどうであらうか?嗚呼、ニーチェが殊勝な顏をしてツァラトゥストラの墓に參る姿が目に浮かぶやうではないか?

善悪の彼岸 (岩波文庫)

善悪の彼岸 (岩波文庫)

  • 此の季節、奈良盆地の、特に南部の田園地帶へ行くと、豐かに實つた田の周りに彼岸花が咲くのを見る事が出來る。死人花、との異名も持つ、どこか不吉でもある花が咲き亂れるさまは、物狂ほしい。明日香村あたりでは白い彼岸花も多いさうだ。