きょうの一冊

 

レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)

レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)

 戦後イタリアで大活躍した作家(なのだそうです)イタロ・カルヴィーノの奇妙奇天烈な連作短編です。カルヴィーノは面白い、変わった小説をたくさん書いています。読者が主人公になってしまう「冬の夜ひとりの旅人が」とか、木に登ったきり降りてこない貴族の一代記「木登り男爵」とか。
 で、「レ・コスミコミケ」です。
 「コスミコミケ」というのは造語みたいですが、「宇宙喜劇」というような意味なんでしょうね。12の短編があるのですが、主人公はいずれもQfwfq氏という、発音困難な名前を持つ老人(?)です。
 話の形式としては、老人の思い出話というか、法螺話なんですが、ホラはホラでもこのQfwfqじいさんのホラはスケールが違う。タイトルの通り、宇宙的なのです。なんとこの人、月が地球から離れていくところにも遭遇したし、太陽系の誕生にも立ち会っていたし、最初に陸に上がった脊椎動物たちの一員だったこともあるし、絶滅寸前の恐竜族の生き残りだったこともある、というんですからね。
 
 こんなとんでもない話を、超人的な想像力を駆使して、時には笑える、時には詩情あふれる短編に作り上げてしまったカルヴィーノは本当にすごい作家だと思います。ウンベルト・エーコなんかもそうですが、こういうのを見ると、イタリアという国の文化的、知的な底力を思い知らされるような気がします。ただただパスタを食って、ワインを飲んで、「シニョール、シニョリーナ、恋してモルト!」というばかりの国じゃないんですよね。