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1185-1986-1995-2011

  

 
 
 
 日本人は地震や台風といった自然のもたらすカタストロフとともに生きてきた民族である。(中略)その被害がどれほど甚大なものであっても、理不尽なものであっても、歯を食いしばってそれに耐えることを学んできた。「諸行無常」というのは日本人がもっとも愛する言葉のひとつだ――すべてのものは移ろう。日本人は崩壊に耐えつつ、はかなさを知りつつ、我慢強く、設定された目標に向かって進んでいく民族である。
 
 村上春樹「東京の地下のブラック・マジック」

 

 

 
 七月九日の日の午の刻ばかりに、大地おびただしう動いてやや久し。(中略)皇居を始めて、在々所々の神社佛閣、怪しの民屋、さながら皆破れ崩るる音は雷の如く、上がる塵は煙の如し。(中略)山崩れて河を埋み、海ただよひて濱を浸す。渚漕ぐ舟は波に搖られ、陸行く駒は足の立所を失へり。大地裂けて水湧き出で、磐石破れて谷へ轉ぶ。洪水漲り來らば、岡に上つても、などか助からざらん。猛火燃え來らば、川を隔てても、暫しは去んぬべし。鳥にあらざれば空をも翔けり難く、龍にあらざれば雲にも又上り難し。ただ悲しかりしは大地震なり。
 
 平家物語卷十二の二「大地震の事」

 

 
  
 
 ベラルーシの歴史は苦悩の歴史です。苦悩は私たちの避難場所です。信仰です。私たちは苦悩の催眠術にかかっている。しかし、私はほかのことについても聞きたかったのです。人間の命の意味、私たちが地上に存在する事の意味についても。
 
 スベトラーナ・アレクシエービッチ 松本妙子訳「チェルノブイリの祈り」

 
 
 
村上春樹 雑文集平家物語〈1〉 (岩波文庫)チェルノブイリの祈り―未来の物語