東と西と

ショートカット (河出文庫)

ショートカット (河出文庫)

 読みました。柴崎友香の連作短編集。
 東京に住む誰かを想う(いわゆる遠距離恋愛中の)、女性の微妙な気持ちの動きを描いた、4つの短編です。
 東京と大阪。遠いとも言える、近いとも言える、微妙な距離です。

 どの短編も主人公は大阪の女の子――というか、二十代なんだけど、「女の人」というより「女の子」という感じ。そう思ってしまうのは、作者が僕と同い年、同じ関西人であるせいかもしれません。
 ここまでぴったりと同時代的な感覚を共有できる作家って、僕にとっては他にいません。前にも言ったけど、柴崎さんは関西弁の会話を描くのが飛びっきり上手で、しかもそれは、見事なまでに僕らの世代の関西弁なのです。登場人物たちに対して、この子、どこかで会ったことあるんじゃないか、とか、この子、知人の誰それの友達なんじゃないか、とか、とても身近な感覚を抱いてしまいます。


 でもこの身近さ、本当に世代的・地域的なものなんだろうか?
 ひょっとしたら、そうじゃないのかもしれません。
 っていうか、たぶん、そうじゃないと思う。

 だからこそ、柴崎さんの小説が広く支持を得ているのだと思います。
 難しい単語を全然使わないやさしい文章や、涙が出そうなほど微妙なところでぴったりと実感できる比喩、女の子らしい繊細さや身勝手さや可愛らしさや冷徹さ。世代や出身が違っても、それらは通じるはずです。

 ただ、いわゆる「ガーリー」っぽい、カフェっぽい、南堀江っぽい感じが、ほんのわずかだけど、鼻につく感じがしないでもないです――って言ったら怒る?