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佐藤亜紀の戦略の書

小説のストラテジー

小説のストラテジー

 たしか一、二年前に図書館でみつけて、すぐに欲しくなって買って読みました。
 さまざまな時代のヨーロッパを舞台とした歴史小説やファンタジーの書き手として知られる佐藤亜紀が、美学や文学の素養をこれでもかとばかりにひけらかし活用しつつ、縦横に、かつ体系的に小説を論じた本です。プラトンの「ミメーシス」と「ディエーゲーシス」についての部分がいちばん面白かったし、重要なことであるように思いました。わが身の無教養をひしひしと感じさせられるのが、この本の欠点といえば欠点。
 面白かったところをちょっと引用。

 受け手に対しても読み手に対しても、従って、まず要求されるのは表面に留まる強さです。作品の表面を理解することなしに意味や内容で即席に理解したようなふりをすることを拒否する強さです。

 読み手が反応するのは記述の運動であって、プロットでも物語でもない

 なしで記述が展開するなら、物語はなしでも全然構いません 

 ミメーシスとディエーゲーシスを併用することによって、書き手は読み手の感じる速度をある程度まで操作できる

 他者の声を取り込むことによって、芸術的散文の書き手は唯一無二の自己の言語から解放される

 うむ。