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ホリエボン二冊目

河岸忘日抄 (新潮文庫)

河岸忘日抄 (新潮文庫)

 堀江敏幸さんの本、二冊目を読みました。
「これといった事件の何も起らない、静かでゆったりした時間が流れる小説」というやつを「いいなあ」と思う気持ちはすごくあるんだけど、実際手に取って読んでみると退屈で放り出しちゃったりすることもあるんです。
 でもこの「河岸忘日抄」はなかなか面白かったです。パリ(と思われる異国の都市の)郊外を流れるセーヌ(と思われる)川に係留された船の上で、コーヒーをいれたり、老人と話したり、クレープを焼いたり、少女と話したり、レコードを聴いたり、郵便屋さんと話したり、本を読んだりして、主人公の男は長い「待機」の日々を過すのですが、その間、出来事と言えるほどの出来事はほとんど起りません。それでもなぜか読ませるのは、細部の面白さと、文章そのものの緊張感と、そして、古今東西の文学、映画、音楽、道具などに関する広い教養に根ざしたさまざまな引用や考察のおかげでしょう。それってエッセイのおもしろさでは? という気もしちゃうんですが、やっぱりそうじゃないんですね。エッセイのような素材も、小説としての構成の中に布置すれば、やはりそれは小説の一部として機能するのですね。好ましい長編でした。