「それで、感想は?」

 うーむ。主人公に共感できたかといえば、あまりできなかった。気持ちは、よく分かるんですよ。しかしね。若いとはいえ、もうちょっと寛容になってもいいんじゃないの? 冗談抜きで。
 サリンジャーという人が偉大なるヒッキーと化して人前に出てこなくなっちゃってることを思い起こして、というわけでもないけど、ホールデンくんの生き方には、共感というよりもむしろ、痛々しさとか、切ないものを感じました。
 訳については、野崎氏のものを読んでいないので、ちょっとなんとも言いかねます。しかし、「村上春樹だなあ」と感じさせられてしまう箇所もしばしばありました。でも、村上氏の文体の方が「キャッチャー」の影響を受けている面もかなりありそうですもんね。どっちとも判断できないです。
 小説としては、好きなほうです。よかったです。前半はなんか愚痴ばっかりみたいだったけど、後半は、情景がいいですね。でもこの妹は、ちょっと苦手だな。サリンジャーの作品に出てくる子供って、なんか理想化されすぎてるかんじがして、馴染めない。ちょっと嘘ですよね、あれ。