朝出かけるとき自転車に乗って走り出すと、後輪のタイヤから空気がみるみる抜けてゆくのが分かって、困ったなあ、これはパンクだ、と思ったけど時間が無いからそのまま走っていたら、アスファルトの道を走っている間はいいけど、うちの近所は田舎なので、アスファルトじゃなくてコンクリートで舗装したでこぼこの道が、駅に行く途中にあったりして、そこは猫がたくさんいるところで、茶トラとか黒なんかと目が合ったりするから、普段は通るの好きなんだけど、きょうは後輪がパンクしてるから、コンクリートの道はがたがたがたがたと自転車が振動するので困ってしまって、タイヤも傷むなあとか、籠に置いてるバッグの中身も揺れるなあ、とか思ったんだけど、朝のことだから、押して歩いたりすると電車に乗り遅れると思って、ぼくはそのままパンクした自転車をこいで行って、ちゃんと電車に間に合う時間に駅に着いたから助かったなあと思って、暑かったからペットボトルを買ってしまって、そしたら快速が来たのでそれに乗ったら、席が空いてなくて、冷たいペットボトルとバッグを持ったままで、電車の中で本を読んだりするのは結構難しくて、電車が揺れたりするとバランスを崩しそうで困るなあ、なんて思いながらも、きょうは筑摩文庫の「中島敦全集・1」を読んでて、「巡査のいる風景」という植民地時代のソウルを舞台にした短編が、いかにも若いときに書いたという感じはするけど、いろんな意味で時代の雰囲気を写し取っていて、今の日本に暮らすぼくらにはなかなか想像しづらい、「帝国」と言われた時代の空気を想像できて面白いなあ、と思っているうちに、電車は乗換駅についてしまって、次の電車に乗り換えるんだけど、最近なぜか駅の改札の前に警察官が立っているのを見るのだけど、彼らが何をしているのかよく分からなくて、なんとなく薄気味悪い気もするんだけど、駅を降りて、会議なんかしてる間はそんなことは忘れてるんだけど、夕方に帰りの電車でまた本を開くと、こんどは「文字禍」という短編で、これはメソポタミア文明の時代を舞台にしていて、戦前にこんな小説を書いた中島敦はすごいと思うし、なによりも、粘土板の書物を収めた古代の図書館の様子を、「書物は瓦であり、図書館は瀬戸物屋の倉庫に似ていた」というひとつのセンテンスで明確にイメージさせる表現力はすごいなあ、と思っていたら、席が空いたので座っていたら、ちょっと眠くなったので本を閉じて眠っていたら、電車で寝ると、とても暑いんだ。
 気づいて目を開けたときには電車は止まっていて、アナウンスが流れていた。
 「・・・駅と・・・駅の間で人身事故が発生したため、この列車は本日のみ・・・駅どまりになります」
 それでしかたないから途中の駅で降りて買い物をして、電車が動き出すのを待って帰ったんだけど、最寄の駅まで帰ってきて、自転車のタイヤがパンクしてることを思い出してうんざり。
 (乱文で失礼いたしました)
 

中島敦全集〈1〉 (ちくま文庫)

中島敦全集〈1〉 (ちくま文庫)