わたし日記

暗闇に目を凝らせ

「なにもかも全て、無意味なの。この世界には意味なんて無いの。それはペシミズムでもなんでもない、当たり前のことなのよ。だからそれを受け入れて生きるほかない。意味のあるものなんて何一つないんだ、って心の底から納得できたときに、まるで暗闇で目を…

共感

そうか。君は今、誰にも会いたくないし、誰とも話したくないんだね? わかるよ、そういう気持ち。 嘘じゃない。よくわかるんだ。僕も今ちょうどそんな気分だ。 ほんとうさ。誰とも話したくない。 世界中がみんな僕に余計な口出しをしようとする。なんで放っ…

書店にて

大好きな作家の新刊がひっそりと棚のすみっこに出ていたから、レジにもっていった。 エプロンのポケットにボールペンをずらりとさした、白髪混じりのおじさんの店員さんが、バーコードをぴっぴっとしながら、口をゆがめて眉をしかめた。 「1890円になります…

自己嫌悪

「あなたの最大の敵はね、あなた自身なのよ」 とか言うのだ、ひとが気持ちよく飲んでるのに。 わたしは視線を上げないで、グラスをのぞき込む格好のままで生返事をする。 「はあ」 「あなたの自意識が、ただそれだけが、あなたの邪魔をしているの。他の誰の…

コーヒーカップ

「君のそういうところが嫌なんだ。許せないんだ」とあなたが言った。 わたしは驚いてコーヒーカップから顔を上げる。 あなたの顔には、怒りよりも疲れがあった。 「わたし……」とわたしは言う。「いま、何を言ったっけ? あなたを怒らせるようなこと言った?…

江戸っ子オヤジの怒り

「お嬢ちゃん、ウチはジイさんの代から真っ当に商売してる寿司屋だよ。ポストコロニアリズムの話なんざァ願い下げだ。とっとと出てってくんな!!」 どんと背中を押されて、がらがらぴしゃんとガラス戸の閉まる音を聞いた。呆然としたまま惰性で二、三歩、ブ…